泣き虫王子と哀願少女


「私、好きな男の子なんていません!」

「へぇ……? そいつはよかった」

「?」



ニヤニヤと何やら意味ありげに含み笑いをしながら、先生が私を見つめ続ける。



「それじゃあ俺にもチャンスありってことだよな?」

「!?」



突然の意味深な発言にドキンと私の心臓が大きく跳ね上がった。



「せ、生徒だからってからかわないで下さいっ!」

「? 俺はべつにからかってなんか……」

「コーヒーごちそうさまでしたっ!」

「おい、 ちょっと待てよ……」



―― ガラッ



「失礼しますっ!」



慌てた私は先生の言葉を無視し、一目散に準備室を後にした。






「やれやれ。これは一筋縄じゃいかなそうだ」



ひとり準備室に残された須藤先生は、ニヤリと不敵な笑みを浮かべそう呟いたのだった。

< 122 / 326 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop