泣き虫王子と哀願少女
「私、好きな男の子なんていません!」
「へぇ……? そいつはよかった」
「?」
ニヤニヤと何やら意味ありげに含み笑いをしながら、先生が私を見つめ続ける。
「それじゃあ俺にもチャンスありってことだよな?」
「!?」
突然の意味深な発言にドキンと私の心臓が大きく跳ね上がった。
「せ、生徒だからってからかわないで下さいっ!」
「? 俺はべつにからかってなんか……」
「コーヒーごちそうさまでしたっ!」
「おい、 ちょっと待てよ……」
―― ガラッ
「失礼しますっ!」
慌てた私は先生の言葉を無視し、一目散に準備室を後にした。
「やれやれ。これは一筋縄じゃいかなそうだ」
ひとり準備室に残された須藤先生は、ニヤリと不敵な笑みを浮かべそう呟いたのだった。