泣き虫王子と哀願少女
―― さかのぼること3時間前……
「し~ずくちゃんっ!」
「キャッ!」
お昼休みにトイレから教室に戻る途中、突然背後から目隠しをされた。
「だ~れだ?」
「リ、リカ……ちゃん?」
「ピンポ~ン! 当ったりぃ~!」
ニコニコと屈託のない笑顔でそのまま抱きついてくる。
「雫ちゃん、当てちゃうなんてすごいね」と嬉しそうに言うリカちゃん。
そりゃぁまぁ、これでかれこれ5回目ですから……。
冷静なツッコミができてしまう程、あれから毎日同じようなパターンでリカちゃんは私の前に現れていた。
……いつも明るくて無邪気で可愛いなぁ……。
夢中になっておしゃべりをするリカちゃんの横顔を見つめしみじみ思う。
実際、男子のみならず女子生徒までもがリカちゃんとすれ違うたび、あまりの可愛さに皆振り返るのだった。
私もリカちゃんみたいに可愛らしくていい子だったらよかったのになぁ……。
無い物ねだりをしても仕方ないとわかってはいるのだが、こんなすぐ手が届く間近でリカちゃんを目の当たりにすると、どうしてもそう思わずにはいられなかった。