泣き虫王子と哀願少女
―― そんなこんなで今現在のこの状況に至っているわけなのだが……。
「……でね、私ぜひ水沢君とお話ししてみたくて! 雫ちゃんに無理言って一緒に連れてきてもらったの!」
「ふーん……」
嬉しそうなリカちゃんに対し無関心そうに答える潤君。
相変わらず感情の読めない表情で窓の外を見続けている。
若干面倒くさげにも見えるのは私だけだろうか?
それにしても、リカちゃんほどの美少女を目の当たりにしても、動じないどころか顔色ひとつ変えないなんて……。
潤君の神経の図太さには、ほとほと恐れ入る。
もしかしてイケメンなんて日頃からキレイな自分の顔を見慣れているから、みんなそんなものなのだろうか?
それとも、単に女性嫌いとか……?
「それでね」とひたすら笑顔でしゃべり続けるリカちゃんを横目に、ひとり悶々と思いを巡らす。
リカちゃんが何を言っても「ふーん」とか「そう」などとしか答えない潤君を見ていると、無断でリカちゃんを連れてきてしまった罪悪感からなんともバツが悪くて仕方がないのだった。