泣き虫王子と哀願少女
「よーし、それじゃあ先週やった小テスト返すぞー」
翌日の3時限目。
例の須藤先生が担当している数学の授業中である。
あのからかわれ事件から既に2度程先生の授業を受けた。
しかしいずれも話はもちろん目が合うことさえ一度もなく、どうという事はなかった。
……やっぱりからかわれただけだったんだ。私ってばあんなに焦ってバカみたい。
机に頬杖をつきながら、心の中で自嘲気味に呟く。
「中田ー」
「はい」
「根本ー」
「はーい!」
あのテスト、出来よくなかったんだよなぁ……。
次々と返される答案用紙を見て、どんよりと心が重くなってゆく。
「深海ー」
「はい」
何事もなかったかのように答案を受け取り席に着く。
せめて半分の50点は越えてますように……。
祈るような思いで答案を広げると
『35点』
目標を遥かに下回る点数が目に飛び込んできた。