泣き虫王子と哀願少女
「はぁっ……」
今日何度目か分からない大きな溜め息をつく。
逃げ出したい気持ちを抑え、ついに覚悟を決めドアをノックした。
―― ガラッ
「失礼します……」
憂鬱な面持ちで中を見渡すと、須藤先生がニヤニヤと微笑みながら窓辺に寄りかかっていた。
ゲッ! 私が一番最初!?
まだ他に誰も生徒が来ていないことに気が付き、思わず顔が引きつる。
「よ~う、深海! 遅かったな!」
「私が一番最初だから遅くないと思いますけど」
先生から視線を外し、わざと棘のある言い方をしてみる。
「他にはあと何人来るんですか?」
警戒オーラを剥き出しにし、冷たい口調で先生に問いかけた。
「他の生徒? 来ないよ?」
「はい?」
信じられない一言に、思わず先生を凝視する。
「今、何ておっしゃいました?」
「だ~か~ら~、他の生徒は誰も来ないって言ってんの」
「!?」
耳たぶをポリポリと指先でかきながら、まるで当然のことのように先生が呟いた。