泣き虫王子と哀願少女
「よお」
ひとり悶々と考え込んでいると、突然声を掛けられた。
「っ! 潤君!」
「待たせたか?」
「う、ううん! 私もさっき来たところだからっ!」
今まで心の中で思い浮かべていた人が突然目の前に現れて、思わず動揺してしまう私。
私服でいつもと雰囲気が違うため、尚更ドキドキが止まらない。
訝しげな顔をしている潤君に「何でもないの」と言い添え、慌てて話を切り替えた。
「あ、あのね、この前はその、庇ってくれてありがとう」
「ん? あぁ……。べつに俺は庇ったつもりはねーよ」
目をそらしながら潤君が呟く。
「でも、私おかげで助かったもの。本当にありがとね」
「俺は、俺がそうしたいと思ったからああ言ったんだ。だからお前が礼を言う必要なんてねーよ」
「うん……」
指先で鼻をさすりながら、どことなく恥ずかしそうに潤君が呟いた。
……潤君……。
言い方はぶっきらぼうだけど、本当は私のことを気遣ってくれているのがよくわかる。
そんな潤君の優しさが体中に染み渡り、心の奥までポカポカと温かくなった。