泣き虫王子と哀願少女
思わず扉にかけた手が止まる。
体が硬直して、中に入ることはもちろん、その場を去ることさえもできなかった。
ドキン……ドキン……
――「私が潤のこと、好きなわけないじゃん!」「潤は単なる男友達だよ~!」
不安に押し潰されそうな心をなんとか救いたくて、リカちゃんの言葉を思い出す。
「そ、そうだよね。友達って言ってたもんねっ」
そう無理矢理自分に言い聞かせ、扉の中をそっと窺い見る。
そして……
「っ!!」
私の瞳に映ったのは、ベッドの上で泣きながら潤君に抱きつくリカちゃんの姿だった。