泣き虫王子と哀願少女
「な……んでっ……?」
信じられない光景に、思わず自分の目を疑う。
「だって……友達だって……」
衝撃のあまり、カタカタと全身の震えが止まらない。
「潤っ! 怖かったっ……!」
「…………」
泣きながらすがりつくリカちゃん。
潤君はそれをこの前のように払い除けるでもなく、無言で優しくリカちゃんの肩をつかんでいる。
―― ズキンッ!
張り裂けそうな胸……いや、もしかしたら本当に張り裂けてしまったのかもしれない。
それ程までに胸が痛かった。
これ以上見ていたくなくて、拒絶するかのようによろよろと後ずさる。
そしてリカちゃんの荷物だけを扉の前に置き、まるで逃げ出すかのようにその場を後にしたのだった。