泣き虫王子と哀願少女
◆崩れたバランス
翌日の昼休み。
「ねー雫、あんたなんか顔色悪いうえにクマできてるけど大丈夫?」
教室の机の上にお弁当を広げながら、明里が心配そうに私を見つめている。
結局夕べは、保健室での2人の光景が頭から離れず一睡もできなかったのだ。
「うん。なんか私、今回は大丈夫じゃないかも……」
苦笑いをしながら弱々しく呟く私に、明里が驚いて目を見開いた。
「えっ……。えぇっ!? いつもならすぐ虚勢張るあんたがいったいどうしちゃったの!?」
「うん。どうしちゃったのかなぁ……ほんと……」
力のない私の反応に、目を白黒させながら戸惑う明里。
「もしかして水沢君と……」
「深海~! 呼んでるぞ~!」
心配する明里の声と被るようにして、クラスメイトの男の子から声を掛けられた。
「?」
誰だろう?
「よいしょ」と寝不足の体に鞭を打つようにして立ち上がり、廊下へと向かう。
「ごめん。お待たせ……潤君っ!」
「よお……」
廊下で私を待っていたのは、一番好きだけど、今一番会いたくない潤君だった。