泣き虫王子と哀願少女


「ど、どうしたの?潤君から訪ねてくるなんて珍しいね」



本当は胸が潰れそうな程辛いのだけれど、無理に笑顔を作って平気なふりをする。



……私、ちゃんと笑えてるかな……?



逃げ出したい気持ちを抑え、体を支える2本の足にギュッと力をこめた。



「昨日、悪かったな」

「え?」

「危ない目にあわせちまったし。それに、保健室まで宝生の荷物持ってきてくれたのお前だろ?」

「う、うん……。べつに……なんてことないよ」



昨日の保健室でのことを持ち出され、途端に頭の中にあの時の光景が蘇る。



―― いやっ……!



反射的にギュッと目を瞑る私。



「お、おい、大丈夫か? やっぱり昨日どっかケガしたのか?」

「ううん! ごめん、何でもないのっ」



―― 嘘だよ。本当は私、胸が張り裂けそうなくらい辛いの……。



どんなに伝えたくても伝えられない気持ちを、心の中で噛みしめる。




「そうか、ならいいんだけど……。でさ、こっからが本題なんだけど……」



前髪をクシャリと握り潰し、言いにくそうに俯きながら潤君が口を開いた。

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