泣き虫王子と哀願少女
「ここ、気持ちいいな……」
目を閉じて空を見上げる潤君。
微かにそよぐ風が潤君のサラサラの髪を揺らし頬を撫でて行く。
青い空に消え入ってしまいそうな程キレイなその横顔に、私も吸い込まれてしまいそうだった。
「さっきさ……」
「えっ! あっ、うん?」
ついつい見とれてしまっていた私に、潤君が目を閉じたまま話しかけてきた。
「お前の教室行ったらいなくてさ。そしたら、お前の友達に屋上にいるはずだから行ってみろって言われてさ……」
「そ、そっか。ごめんね手間かけさせちゃって」
「べつに……手間なんかじゃねーよ……」
潤君が言っている『友達』とは、きっと明里のことだろう。
今頃、したり顔でいる明里の様子が目に浮かぶようだった。
「それで、私に用事って?」
「あぁ。これ……」
「?」
潤君が、腕に抱えていた茶色い紙袋を私に差し出す。
……何だろう?
「中、見てもいい?」
「あぁ」
念のため確認してから中を覗き込むと、そこにはたくさんの本やDVDが入っていたのだった。