泣き虫王子と哀願少女
「おう、来たか」
「はい」
窓辺で煙草を吸っていた先生が、吸いかけの煙草を灰皿へと押しつける。
よく見れば、灰皿は既に煙草の吸殻で溢れかえっていた。
……先生も落ち着かなかったんだ……。
いつもとは違う緊張感が教室を漂い、更に胸の鼓動が早さを増す。
「まぁとりあえずその辺に座れよ」
「あ、いえっ。このままで大丈夫です」
先生の言葉をやんわり断り、震える足で先生の方へ歩み寄る。
「あの! この前はありがとうございましたっ」
「ん? いや……」
礼儀として、まずはこの前のお礼を先に伝える。
ふぅっと一度心の中で呼吸を整え、改めて先生へと向き直った。
「それで、その…… 私、自分で悩んで答え出しました」
「そうか」
先生の真剣な瞳が真っ直ぐに私の瞳を見つめる。
そして ――
「あ、あの! それで……私っ……―― 」