泣き虫王子と哀願少女
「私、やっぱり先生とはお付き合いできませんっ!」
「っ!!」
先生が驚いたように目を見開く。
「先生のこと嫌いとかじゃなくて……。私の中にはまだ潤君がいっぱいいて……」
「……」
「こんな気持ちのまま、逃げるように誰かと付き合うなんて私にはできません」
「深海……」
「だから……だから、潤君にもきちんと自分の気持ち伝えて、ちゃんとフラれて……それからじゃないと一歩も前に進めないんです」
「俺はそれでもっ……」
先生の顔が辛そうに歪む。
だけど、目をそらしちゃいけないんだ……。
「私が……それじゃだめなんです。だから……ごめんなさい……」
「だめ……なのか……? どうしても……俺じゃ……だめなのかっ!?」
「……。ごめんなさい……」
「っ!!」
シン……と教室に重い静寂が訪れる。
張りつめた空気が2人を包み、息をするのもはばかられた。
お断りした以上、もうここにいちゃいけないよね……。
そう思った私は、教室を出るため固まった足をゆっくりと動かす。
「失礼します」と踵を返そうとしたその時
「な……んでっ……」
「え?」
「なんでだめなんだっ!」
「!」
先生の悲しみに満ちた怒声が教室中に響き渡った。