泣き虫王子と哀願少女
「リカちゃんっ!」
危なかった……。
天の助けとばかりに、リカちゃんの予想外の登場に安堵した私だったのだが……。
「リカっ!」
えっ?
先生の一言に驚き、再度先生の方を振り返る。
今、『リカ』って呼び捨てにした……?
先程まであれ程怒りに満ちていた先生の顔が一転、むしろ怯えたような表情へと変わっていた。
「先生……?」
呼びかける私の声には全く反応を示さない。
まるで私など、先生の瞳には映っていないかのようだった。
カツカツカツ……
そんな先生に、怖いくらいに冷たい目をしたリカちゃんが無言で近付いて行く。
そして ――
パシンッ
「っ!?」
わなわなと震えている先生の頬を、平手打ちしたのだった。