泣き虫王子と哀願少女
ドクンッ
一番大切な人の名前を突然出され、心臓が跳ね上がる。
「そうよ。前々から潤のこと狙ってチャンスを窺ってたのに……。それなのにあんたが突然現れて、潤の周りをいっつもウロチョロするから悪いのよっ!」
「……」
「だから、逆にあんたを利用してやったの。私はあんたを介して潤に近付き、あんたには貴矢を差し向けてね」
「……そんな……」
だから須藤先生は突然私に近付いてきたのか……。
今更ながら、ようやく合点がいった。
「それじゃ足をケガしたっていうのも……」
先程リカちゃんが普通に歩いていたのを思い出す。
「あたりまえじゃない。あんなの演技よ演技っ」
リカちゃんの答えに、ショックのあまり言葉を失う私。
そんな私を嘲笑うかのように、クツクツとリカちゃんが笑っている。
それはもう天使などではなく、むしろ悪魔の微笑みだった。