泣き虫王子と哀願少女
「それなのに」と、リカちゃんの顔から笑みが失せ、再び憎悪の炎が瞳に宿る。
「貴矢のヤツ、しくじりやがってっ!」
先生の名前がリカちゃんの口からこぼれるたび、生気のない先生の体がビクンと跳ね上がる。
「ご……ごめんよ、リカ……」
消え入りそうな声でリカちゃんに謝る先生。
「ちょっと顔がよかったからかまってやったのに……。お前の顔なんかもう見たくもないっ!」
「っ! リ、リカっ! ごめんよっ! 何でもするから……俺を……俺を捨てないでくれっ……!」
膝を床につきながら、憔悴しきった顔で再び先生がリカちゃんにしがみついた。
「そうね~……」
そんな必死な先生を見下ろしながら、不意にリカちゃんの目が怪しく光る。
「さっきはごめんね~、貴矢」
「? リ、リカ……?」
そう言ったかと思うと、突然リカちゃんが先生の顎を持ち上げ口づけをしたのだった。