泣き虫王子と哀願少女
「あ……」
ニャン太の声で我に返ったのか、潤君が慌てて視線を外す。
「わ、悪い……」
そう言って、私の手首からも恥ずかしそうに手を離した。
「ううん……、だ、大丈夫っ!」
ジンジンと焼けるように熱い手首を押さえながら、私も真っ赤になって俯く。
潤君。『俺が好きなのは』の続き、何て言おうとしたの?
そのことがものすごく気になるのだが、弱虫の私に今更聞けるはずもなかった。
互いに妙に気まずくて、そのまま無言で立ち尽くす2人。
その空気を打ち消すように、今度は潤君の方から話しかけてきた。
「あ、あのさっ」
「は、はいっ」
動揺のあまり、またしても他人行儀な返事になる私。
同じく動揺している潤君は、今回は余裕がないらしく、そんな私には気にもとめず言葉を続けた。
「もしよかったら、今度の休みに俺ん家来ないか?」
「へっ?」
「その……泣けるDVDとか、一緒に見ようかなと……」
「っ!!」
耳まで真っ赤になりながら、恥ずかしそうに鼻先をこする潤君。
そんな潤君の予想外の誘いに
「行くっ。 絶対行くっ!!」
もちろん私は間髪入れず即答した。
「よしっ、んじゃ決まりな」
私の返事に潤君は嬉しそうにそう呟くと、最高の笑顔でニカッと笑ったのだった。