泣き虫王子と哀願少女
「えーと、次のタバコ屋の角を右っと……」
週末の日曜日。
私は潤君に書いてもらった地図を頼りに、一路水沢邸を目指していた。
『お宅訪問』は恋する乙女には夢のようなビッグイベントなのに、秋雨の影響で空は生憎の雨模様。
浮かれすぎた私へ頭を冷やせといわんばかりに、灰色の空からは今にも雨の粒が落ちてきそうだった。
「今朝はまたあの夢見ちゃったし……。この天気といいなんか縁起悪いなぁ」
せっかくの楽しみに水を差されたようで、不満げに唇を尖らせながらぼやいてみる。
それと同時に、今日の夢の内容を頭の中に思い浮かべてみた。