泣き虫王子と哀願少女
「なんだか不思議な人だな……」
水沢君のことを知れば知るほどその思いが強まってゆく。
あるときは道端で踏まれてしまったタンポポを「かわいそうだ」と泣きながら植え直し、またあるときは、歴史の教科書を読みながら、激動の時代を生き抜いた人達に対し感動の涙を流していた。
朝礼の校長先生の話を聞いただけで、何てためになる話なんだと瞳をうるませていたことさえある。
ここまでくると、私とは逆の意味で何か問題でもあるんじゃなかろうか……と少々心配になってくる。
だけど、そんなありえない程の泣き虫君なのに、それ以外のことに関しては同一人物とは思えないくらい『超クール』だった。
これだけ追いかけているにもかかわらず、いまだに彼の笑顔を目にすることがなかったのだ……。