泣き虫王子と哀願少女
お、男の人っ! 潤君のお父さんかな!?
大人びた声に、思わず動揺してしまう私。
「あ、あのっ、潤君と同じ高校の深海といいますが……」
「おぉ来たか」
「えっ?」
私が最後まで言い終わらないうちに、その男の人が気軽に話しかけてきた。
「『え?』って、俺だよ俺、潤」
「あ、わわわ、潤君!?」
うわーっ! インターホン越しだと、すごく大人な感じに聞こえるっ!
ドキドキしながら、必要以上にインターホンへ耳を傾ける私。
「玄関のロック解除したから、エレベーターで上がってこいよ」
「う、うんっ」
またひとつ新しい潤君を知れたようで、無性に嬉しくなる。
会う前からこんなにドキドキしまくりで、今日1日大丈夫かな……?
嬉しさ反面そんな不安も抱えつつ、潤君に指示された通りそのままエレベーターへと飛び乗った。