泣き虫王子と哀願少女


「そういえば、今日潤君のお父さんとお母さんは?」



部屋を一通り眺め終えた私は、素朴な疑問を潤君に尋ねてみた。



「あぁ、お袋と親父?」

「うん」

「仕事で留守。うちは共働きだし仕事も忙しいらしくてさ。2人ともあんまり家には帰って来ねーんだ」

「そっか。ご両親大変なんだね」

「まあな」



待てよ……?確か潤君は一人っ子って言ってたよね。……ってことは、今家には潤君と私の2人だけってこと!?



気が付いた途端、またしても明里の言葉が蘇る。



ま、まさか本当にそんなわけないよね。

第一今日は泣けるDVDを見に来たわけだし……。



だが、一度意識してしまったものは、なかなか頭から離れないものである。


考えないようにすればする程、結局そればかり考えているという堂々巡り状態に陥ってしまった。

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