泣き虫王子と哀願少女
「おい……顔赤いけど、この部屋暑いか?」
「え?」
エアコンでもつけようか?と提案してくる潤君に
「だだだだ、大丈夫だからお気遣いなくっ!」
と、大袈裟なくらい両手を振って否定する。
もしかして私、変なこと考えてるって顔に出てたのかな!?
更に熱くなった顔をペチペチと叩きながら、必死に邪念を頭から追い払った。
「お前、本当に大丈夫か?」
「う、うんっ! 全然大丈夫だよ! あははー……」
「ん? そうか? ならいいけど……」
相変わらず不思議そうに首を傾げている潤君。
まずい、潤君に変に思われてる……。っ! そうだっ!
ここへ来る途中、駅前の洋菓子店で購入したケーキのことを思い出した私は、そんな潤君の気をそらすように、慌てて手に持っていた箱を潤君へと差し出した。
「あの、これっ。ケーキなんだけどよかったら食べて?」
「ああ、悪いな。サンキュ」
「ううん!」
はいっ、と潤君に箱を手渡そうとして、足を一歩踏み出した。……はずだったのだが
ガツッ
「キャッ!」
「危ないっ!」
カーペットの縁につまずいた私は、そのまま勢いよく前のめりに突っ込んでしまったのだった。