泣き虫王子と哀願少女
「雫、もしかして昨日……何かあった?」
「昨日……?」
『好きな女から貰ったんだ』
……!
潤君の言葉が、怒った顔と共に蘇る。
「な……にも……、なかったよ……」
「そう……。ならいいけど……」
勘のいいお母さんのことだ。
きっと私が嘘をついてることくらいお見通しだろう。
「じゃあ、プリンでも食べない? 雫の大好きなとろとろのやつ」
それ以上は私に追及せず、優しい顔でお母さんが微笑む。
その笑顔を見て、ふと頭に浮かんだことをお母さんに聞いてみた。
「ねぇお母さん」
「うん?」
「お母さんとお父さんて、どうやって付き合い始めたの?」
ビックリしたような顔で目をパチパチさせているお母さん。
やがて……
「雫も、もうそんなことが気になる年頃になったのね」
そう感慨深そうに呟いたお母さんが、優しい声で話し始めた。