泣き虫王子と哀願少女
「お母さんがお父さんと初めて会ったのはね、雫と同じ高校2年生の時だったの」
「高校2年?」
「そう。お母さんが上級生の先輩にからまれてるところを、偶然通りかかったお父さんが助けてくれたの」
嬉しそうな顔でお母さんが続ける。
「ああ見えてお父さん、あの頃は結構ヤンチャでね。髪の毛なんかリーゼントにしてガッチガチに固めてたんだから」
「へー……」
あのお父さんが……。
真面目を絵に描いたような今の姿からは、とても想像ができない。
「そんなだから学校でもすごくモテてね。お母さんも、もちろんそんなお父さんに一目惚れ」
「お母さんが一目惚れ? 私、逆かと思ってた」
「ふふっ、意外でしょ?」
「うん、意外……」
お父さんのほうが尻に敷かれているから、てっきりお父さんの方から好きになったとばかり思ってたのに。
「で、次の日からお父さんに猛アタック! ライバルも多かったし、お父さん硬派だったから、お母さん何度もフラれちゃったけどね」
「フラれても……それでも諦めなかったの?」
「もっちろんっ! だってお父さんのこと大好き過ぎて、どうやったって諦めることなんてできなかったんだもの」
「お母さん、すごい……」
「アハハ、まあね。それでついに私の熱意にお父さんが押し切られて、付き合い始めたってわけ」
「そっかぁ……」