泣き虫王子と哀願少女
お母さん、すごく頑張ったんだな……。
何回もお父さんにフラれたお母さんと、昨日潤君にフラれた自分の姿が重なる。
私……私はちゃんと頑張ったの……?
ふと、そんな疑問が頭の中にわいてきた。
「まぁ、相手のことを考えずに、自分の気持ちばかりを押し付けることがいいとは言えないけど、自分が納得できるまでちゃんと頑張ることは大切なんじゃないかな」
「納得……?」
「うん。ちゃんと精一杯頑張りました、って自分に胸張って言えるようじゃないと、後で絶対後悔するもの」
「後悔……」
お母さんの言葉が、胸の奥にズシリと重く響く。
「雫ももう高校生だから色々あるとは思うけど……。あとで『やっぱりあの時こうすればよかった』なんて後悔だけはしないよう、今を精一杯頑張んなさい」
「…………」
「さてと……」
一通り話し終えたお母さんが、おもむろに立ち上がった。
「今日は学校にはお休みしますって連絡しておいたから、1日ゆっくり寝てなさいね」
「うん、わかった」
「雫?」
「ん?」
「頑張れ……!」
「っ!」
お母さんは私を励ますようにそう言い残し、ヒラヒラと手を振りながら部屋をあとにしたのだった。