泣き虫王子と哀願少女
◇師匠と弟子
ガサッ……
「ひぃっっっ!!!」
茂みにぶつかって心臓が飛び出るほど驚いた私は、急いで両手で自らの口をふさいだ。
ここは放課後の青葉高校の裏庭。
学校の敷地内ではあるが、普段はほとんど人通りがない物寂しい場所である。
すでに毎日の日課と化している水沢君の『追っかけ』をしてここまでやって来たのだが―― 。
「こんな何にもない場所に何の用があるんだろう……?」
ここ一ヵ月程観察した限りでは、裏庭にやって来たことなど一度もない。
疑問に思いつつも、気付かれないよう茂みの陰からそっと様子をうかがう。
……放課後……裏庭……誰もいない…………あっ!――――
こ、これってばもしかして、少女漫画で何度も見た『告白タイム』ってやつ!?
私の脳裏に、突如として漫画で見た告白シーンが舞い降りてきた。