泣き虫王子と哀願少女


「ねぇ雫?」

「うん?」



しばらく考え込んでいた明里が、意を決したように口を開いた。



「雫はこのままでいいの?」

「え?」

「ようやく人を好きになれたのに……、このまま何もせずに……この恋終わらせちゃってもいいのっ……?」

「明里……」



途中から声を震わせる明里。


その大きな瞳に、溢れんばかりの涙を浮かべていた。



「っ! 明里ぃ……。なんで明里が泣くの?」

「だって、このまま終わっちゃうかと思うとすっごく悲しいんだもんっ。
私の大事な雫がこのまま傷付いたままなんて絶対やだよぉっ」

「明里っ……」



そう言って、今度は明里の方から私に抱きついてきた。



「雫には、もし水沢君と結ばれなかったとしても『それでも精一杯頑張ったよ』って胸張ってほしいのっ……。
あとで後悔なんて絶対してほしくないのっ」

「後悔……」



お母さんも、明里と同じこと言ってた……。



「初恋は一生で一度きりだよ? 雫の初恋、悲しい思い出にしないで……」

「……」

「……っう……う……うぅっ……」

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