泣き虫王子と哀願少女
「っ!」
「なんだ……夢か……」
夢と現実の区別がつかないくらいリアルな夢だったな……。
額には、じっとりと汗が滲んでいた。
ぼんやりと目をこすりながら、先程見た夢のことを思い出す。
「あの女の子、私だったんだ……」
思いもよらない真実に、頭が混乱する。
「それにあのネックレス。潤君の家で見たのと同じ、雫型のティアドロップネックレスだった」
本当に単なる偶然なのだろうか。
『偶然』の一言で片付けてしまうには、あまりにも不自然な気がする。
もしかして、夢の中の幼い私は今の私に何かを伝えようとしているんじゃないだろうか……?
「雫ーっ! 遅刻するわよーっ! 早く降りてらっしゃーいっ」
ベッドの上でしばらく悩んでいると、階下からお母さんの声が聞こえてきた。
「わわっ、いっけないっ」
慌ててベッドから起き上がり時計を確認する。
「げっ、もうこんな時間? 急がなくちゃ」
動く速度を更にアップさせ制服へ着替えると、足早に朝食が待つキッチンへと階段を駆け下りた。