泣き虫王子と哀願少女


そういえば……



ふと以前お母さんに、私は泣いたことがあるのかと聞いた時のことを思い出した。


お母さんは、幼い頃の私は泣き虫だったと言ってたっけ。



だとしたら、私は覚えてないけど、もしかしたらお母さんなら夢の中のあの男の子のこと何か知ってるんじゃないだろうか?



そう考えた私は、ダメもとでお母さんに聞いてみることにした。



「ねぇお母さん」

「ん?なあに?」



手を休めることなくカラカラと唐揚げを揚げているお母さんが、忙しそうに返事をする。



「あのさ、私が泣き虫だった頃、私と仲がいい男の子っていた?」

「雫が小さい時?仲がよかった男の子……。あぁ、いたいたっ」

「えっ! それどんな子?」

「どんな子って言われてもねぇ……。確か坊主頭で整った顔をした、なかなかカッコイイ男の子だった気がするんだけど」

「うんうん、それで?」

「今の家に引っ越して来る前……確か、T市のアパートに住んでる時に近所に住んでた男の子じゃなかったかしら?」

「ねぇ、あと覚えてることない?」

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