泣き虫王子と哀願少女
本当にいたんだ……。
衝撃の事実に、思わずお母さんに詰め寄る私。
「えっ?えぇ?そうねぇ……」
眉間にしわを寄せて、考え込むこと数十秒。
「あっそうだっ」
「えっ?なになに!?」
「ご両親のお仕事が忙しいらしくて、その男の子だけ田舎のおじいちゃんの家に預けられることになってね。
でもあんた達『絶対イヤっ』ってきかなくて。ついには駆け落ちまでしちゃったんだから」
「か、駆け落ちっ!?」
予想外の言葉に、思わず自分の耳を疑う。
内気な今の私からは、駆け落ちだなんてとても想像ができない。
「そーよう。まぁ、駆け落ちって言っても子供だからね。
隣町の道路を手を繋いで歩いてるところを発見されて、それでおしまい。
まぁ、しばらくは部屋にとじこもって泣き続けてたけど、そういえばそれからパッタリと、泣くこともその子の話をすることもなくなったわねぇ……」
「ねぇお母さん。その子が預けられた田舎って、どこだか覚えてる?」
「ん~……どこだったかしらねぇ……。確か……新潟だったかしら」
「っ!新潟っ!?」