泣き虫王子と哀願少女
『―― 新潟にあるおじいさん家の民宿を手伝いに、夏休み中ずっと向こうに行ってたの!』――
頭の中でカチリと、記憶の欠片という名のピースがはまる。
「ねぇ、ネックレス、雫型のネックレスのこと何か知らないっ?」
せっつく私を不思議に思ったのか、コンロの火を止めてお母さんが怪訝な顔で聞いてきた。
「雫、そんなに慌ててどうしたの?学校、間に合わなくなっちゃうわよ?」
「いいのっ。それよりももっと大切なことなのっ」
「大切なこと?」
「そうっ。今聞いておかないと、絶対後悔することなのっ」
必死の形相でお母さんにお願いをする。
そんな私をしばらく真剣な顔で見つめていたお母さんが
「わかった。雫がそこまで言うんだもの。きっと何か深い理由があるんでしょ?お母さん、雫に協力する」
溜め息をひとつつき、諦めたように苦笑いしながらそう呟いた。
「! お母さんっ、ありがとうっ。大好きっ!」
「ふふふ、この子ったら」
そう言って私は、嬉しくてお母さんの腕に抱きついた。