泣き虫王子と哀願少女
昔から、人けのない場所に好きな人を呼び出して告白するパターンは、少女漫画ならずとも王道中の王道である。
「どどどど、どうしようっっっ!!!」
ようやく落ち着きを取り戻した心臓が、またドキドキと高鳴り始める。
漫画やドラマ以外で、実際に告白している場面に出くわしたことなど一度もない。
ましてやそれが自分の知っている人だなんて、考えただけでも顔から火が出そうだった。
……でも、もしも水沢君がOKしちゃったら……。
勝手な妄想がどこまでも暴走する。
そもそも好きでもない相手に自分がこんなことを考えるのは、まったくのお門違いなのだが……。
それに加え、人の告白をのぞき見なんてあまりにも悪趣味なようで嫌なのだが、なぜだか気になってどうしてもその場を去ることができなかった。
「……だけど……でも……どうしよう……」
ひとり悶々と頭を抱える中、突然カサッという音が静寂な空間に響き渡った。