泣き虫王子と哀願少女
「それでね、さっきの続きだけど……」
中断してしまった話を元に戻す。
「雫の形をしたネックレス、覚えてないかな。多分私が持ってたと思うんだけど……」
「ネックレス? 雫型のネックレスって、もしかしておもちゃのやつ?」
「そうっ、それ!おもちゃのティアドロップネックレス!」
予想以上の好感触に、期待が高まる。
「あぁっ、あれのことね! あれはね、雫が5歳の誕生日の時にお父さんとお母さんが雫にプレゼントしたものよ」
「それで?」
「雫、すっごく大切にしてていっつも首につけてたんだけど、ある日突然他の人にあげちゃったのよ」
「誰にっ!?」
「駆け落ちした男の子」
やっぱり……。
カチリ
またひとつ、記憶の欠片が埋まって行く。
「お母さん。その男の子の名前……覚えてる……?」
最後の欠片を埋めるため、私はお母さんに震える声で最も重要な質問をした。
「男の子の名前ねぇ……。うーん……。なんだったかしら……」
記憶を絞り出すように、こめかみをポンポンと指先で叩きながら考え込むお母さん。
お願い、お母さんっ。思い出してっ!
お母さんの記憶だけが頼りな私は、両手を顔の前で組みひたすら祈るしかなった。