泣き虫王子と哀願少女
ドクン……ドクン……
待っている時間が、途方もなく長く感じられる。
「確か最後に『ン』が付いたのよねー……」
それって……
「ケンでもないし……シンでもないし……」
それってもしかして……
「お母さん……、もしかして……」
「あーっ! 思い出したっ! 『ジュン』よ、『ジュン』!」
「っ!!」
カチリ
失っていた記憶の、最後の1ピースが音を立てて埋まった。
「思い……出した……」
その瞬間、すっぽりと抜け落ちていた幼少期の苦い記憶が、私の脳内に鮮明に蘇ったのだった。