泣き虫王子と哀願少女
―― 11年前・夏
ミーンミーンミーン……
「ジュン、行っちゃうの?どうしても遠くに行かなくちゃダメなの?」
「しーちゃん、ごめんね。
パパとママに一生懸命お願いしたんだけど、お仕事が忙しいからどうしてもボクと一緒にいられないんだって」
「じゃあ、アタシのおうちでジュンも一緒に暮らそうよ!」
「ううん、だめだよ。おじいちゃんがボクのこと待ってる」
「だって、うっ……だってそれじゃ、もう……会えなく……っなっちゃうの?」
「しーちゃん……。泣かないで、しーちゃん」
「だって……ひっく……」
「ボクがもっとおっきくなったら、きっとまたしーちゃんに会いにくるよ」
「っ……本当っ……?」
「うんっ! 絶対っ。それで、そしたら今度は、ずっと一緒にいようよ」
「ずっと……?」
「そうだよ! ずっと、ずーっとだよっ!」
「ひぃっく……う、うんっ、わかった。……アタシっ……待ってるからっ」
「うんっ」