泣き虫王子と哀願少女


そうだ。


そうだった。



駆け落ちして見つかっちゃったあとに、あの約束を交わしてジュン君に、宝物だったおもちゃのティアドロップネックレスを渡したんだった。



そして翌朝起きてみると、ジュン君はもうこの町にはいなかったんだ。



ジュン君に裏切られたと勝手に勘違いした私は、何日も何日も泣き続けて……。


やがて辛すぎて壊れそうな自分の心を守るために、ジュン君の記憶と共に涙も心の奥底に封印したんだった……。



今考えれば、ジュン君もきっと秋になってからおじいちゃんの家に行くものだと、本当に信じていたのだろう。


恐らくは、なかなか離れない私達に見かねた潤君のご両親が、とりあえず引き離すためについた嘘に違いない。



でも、幼い私にはもちろんそんなことわからなくて……。



本当に本当に悲しくて、そんな自分の心を守るために必死だったんだ ―― 。

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