泣き虫王子と哀願少女
「ふうっ」
高ぶった心を落ち着かせるため、ひとつ大きく深呼吸をする。
よしっ。
改めて気合を入れ直し、勢いよく潤君の前へと躍り出た。
ザザッ
突然現れた私に気が付いたジュン君が、撫でていたニャン太から私へと視線を移した。
ニャン太と遊んでいた時は楽しそうに笑っていたのに、私の方を向いた途端凍るような冷たいものへと変わる。
ズキンっ
わかってはいたけれど、その冷たい瞳を見ると、どうしても足がすくんでしまう。
「あ……」
そのまま何の言葉もかけられずにいると、ジュン君はこの前同様立ち上がってこの場から去ろうとした。
行っちゃうっ!
「ま、待って!」
立ち去ろうとするジュン君の背中に、必死で声を投げかける。
ドクン……ドクン……ドクン……
不安を奏でる心臓の音が、体中に反響して頭にこだましている。
言わなくちゃっ。
今日はちゃんと全部気持ち伝えなくちゃっ!
そんな私の思いとは逆に追いかける私を無視するように、ジュン君の背中がどんどん遠くなって行く。