泣き虫王子と哀願少女
な……に……?
驚いて、ゆっくりと瞳を開いてみる。
手……?
「お前……、泣けるようになったのか……?」
「っ!」
「俺のことも……思い出したのかっ?」
「うんっ。 全部っ……思い出したよ……」
見上げると、私以上にたくさんの涙で頬を濡らした潤君の顔が、視界いっぱいに飛び込んできた。
「な……んで……潤君が泣いてるの?」
「……くっ……」
震える指先を、恐る恐る潤君の頬へと伸ばす。
「お前がっ……雫が……半分俺にくれただろ? 『泣き虫さん』を……」
「あっ……」
「あれから俺はっ……すっかり……泣き虫になっちまった……」
そう言って、ニッコリと潤君が微笑む。
「そうだったね……。ごめんね……」
潤君の涙をそっと指先で拭うと、その手に潤君の温かい右手が重ねられた。
「いいんだ。俺のほうこそっ……怒ってごめん……。
俺のせいで……辛い思いさせてごめんっ……」
「……っ! い、いのっ。もうっ……いいのっ……」
―― グイッ
再び溢れ出した涙ごと包み込むように、潤君が私の体を引き寄せてギュッと抱きしめた。
「もう……離さないっ……」
「うんっ……」
私の燃えるような熱と、潤君の心地よい温もりが混ざり合って、そのまま溶けてしまいそうだった。