泣き虫王子と哀願少女
◆いつもと一緒
「いや~、それにしてもよかったよかった」
「うん」
翌日の放課後。
教室で帰り支度をしていると、ニカッっと笑いながら明里が嬉しそうに口を開いた。
「無事涙も出るようになったし、水沢君にもちゃんと『好き』って伝えて両想いになれたしっ!」
「えっ?」
……好き?
一瞬頭が真っ白になって、きょとんとする私。
「ん?どしたの?」
「う、ううんっ、何でもないよっ」
いぶかしげな顔をする明里を、作り笑いでそれとなくごまかす。
笑顔とは裏腹に、私の中で不安と共にじわじわと広がってゆく『好き』の2文字。
どうしよう……。
どうしよう……私……。
潤君に『好き』って言ってないじゃんっ!