泣き虫王子と哀願少女
「―――― ………っ」
「初めて水沢君の笑顔見ちゃった……」
その瞬間、水沢君以外の全ての景色が真っ白に姿を変えた。
ビックリとか好奇心とか、私が知ってるそんなんじゃない別の温かい何かが胸いっぱいに広がって、トクントクンって優しい音を奏でてる……。
今まで一度も感じたことのない、この気持ちは何だろう……――
言葉では説明できない感情にどんどん体中が支配されていくのが自分でもわかった。
「もっと近くで見たい……」
いつの間にかそう思っていた私は、無意識のうちにどんどん前のめりになっていたらしく――
ドスンっ!
気が付くと、不覚にも派手な音を立てて水沢君の前に転がってしまったのだった……。