泣き虫王子と哀願少女
―― どどど、どうしよう……!?
ここは2年C組のドアの前。
教室内に入る勇気が出ず、ひとり頭を抱えている最中である。
昨日水沢君と別れ際に、早速今日の放課後から特訓(?)を始めようってことになったのはいいんだけど……。
他人の教室というのはなかなか入りにくいもので、引込み思案な私にとってはかなりハードルが高い。
しかも女友達ならまだしも男に会いにきたのだからなおさらだった。
「この前は明里がいたから大丈夫だったけど……」
以前C組の教室に明里と一緒に忍び込んだのが、なんだか懐かしく思える。
そんなことを思い出しつつドアにしがみついていると
「入んねーのか?」
突然背後から男性の声がした。
「キャッ!」
思いがけない呼びかけに、ビクリと体が跳ね上がる。
振り向いたその先には、私がここ1ヶ月間遠くから見続けてきた水沢君がいた。