泣き虫王子と哀願少女
なんとか元気を出してほしくて、普段言いなれない冗談なども言ってみる。
「今日は泣かないんだね」
「うっせー。俺は自分のためには泣かない主義なんだ」
どことなく拗ねた感じの潤君が、ガシガシと鼻先を指でさすった。
「野球、やったことあったんだ?」
「中坊ん時な」
「そっか」
他愛もない会話が続く。
本当はタオルを渡したいのだが、先程断られていた女の子達の光景が頭をよぎりなかなか言い出すことができない。
「あ、あのっ……!」
「?」
更に何かを言いたげに詰め寄る私を見て、潤君が一瞬不思議そうな顔をする。
そして次の瞬間
「サンキュ……」
真意を察したのか、私が握りしめていたタオルを手に取り、潤君がほんのちょっとだけ微笑んだのだった。