泣き虫王子と哀願少女
「あ、明里ぃ……。おはよ」
「むっふふ~!」
やれやれと見返す私の頬を、何やら含みのある笑みを浮かべ左手の指先でツンツンとつついてくる。
「……はい?」
「『はい?』じゃぁないわよね~ぇ?」
なおもニヤニヤとしながら横目で「早く話しなさい」と言わんばかりの視線を絶えず送ってくる。
……まずい。こういう顔をしてる時の明里は大抵面倒な程しつこいんだよね……。
今までの経験からよからぬ気配を感じ取った私は、素知らぬ顔で明里の腕から逃れようとした。
ガシッ!
「あっ!」
だがしかし、長年私の親友をやっているだけのことはあり、そう簡単には逃がしてくれない。
先程より更に強い力を腕に込めた明里は、私の顎から頬にかけてを右手で包み込みプニプニと揉みながら
「ふっふ~ん。この明里様から逃げようったってそうはいかないわよ~?」
不敵な笑みを浮かべたのだった。