泣き虫王子と哀願少女
その日の昼休み、私はニャン太に餌をあげるため納豆を片手に裏庭を訪れた。
「ニャン太ー。美味しい美味しい納豆だよー」
他に誰もいない静かな裏庭で、納豆が入った容器のフタを開けニャン太が現れるのをひたすら待つ。
時々こうして餌を持ってニャン太に餌をやるのが、いつの間にか私と潤君の習慣となっていた。
「ニャン太ー。早く出てこないとお姉さんが納豆食べちゃうぞー」
なかなか出てこないニャン太に、軽く脅しともいえる言葉を投げかけてみる。
―― ガサッ……!
脅し作戦が効いたのか、早速背後から物音が聞こえてきた。
作戦最高により自信満々のしたり顔で振り向く私。
「ププッ! ニャン太ってばわかりやす…………っ!?」
だがしかし、そんな私の瞳に映ったのは『泣き虫王子』こと潤君の姿であった。