泣き虫王子と哀願少女
―― ニャ、ニャン太じゃなかった~っ!
予想外の人物の登場に思わず言葉が途中でつまる。
ボボボボボンッ!!!
追い打ちをかけるように、昨日の笑顔がまたしても脳裏に蘇り例のごとく再沸騰。
こうして思い出すたびに赤面するのは、今日だけでいったい何度目になるだろう……?
そんな私の心中を知る由もない潤君は、いつも通り不愛想に声をかけてきた。
「よう」
「あ、あははは。こ、こんにちは~」
極力平静を装いつつ返事をする。
「ニャ、ニャン太ね~、なんか……い、いないみたいだよ……? ど、どこ行っちゃったのかな~? あはは~……」
動揺を隠すため必死に言葉を絞り出す。
その時 ――
「 んにゃ~ !」
「 ??? 」
まるで自分の存在をアピールするかのようなニャン太の声。
慌てて鳴き声が聞こえた方向に目をやると、スリスリと体を潤君の足もとにこすり付けているニャン太がいたのだった。