泣き虫王子と哀願少女
「潤君お待たせ!」
放課後を迎えた私は、約束通り潤君との待ち合わせ場所である図書室を訪れた。
すでに窓際のテーブル席に座っている潤君の向かい側の席に腰をおろす。
「それで今日は何をするの? 図書室だから泣ける小説を探すとか?」
頬杖をつきながら窓の外を眺めていた潤君が、無表情でこちらを向き呟いた。
「勉強」
「えっ?」
「期末が近いから、そのテスト勉強」
「!!!」
期末テスト……。
すっかり忘れていた私は、途端に目の前が真っ暗になった。
……だから鞄も持ってこいって言ったのか……。
「わかんないとこあったら教えてやるから、早く教科書とノート出して」
「…………」
意気消沈しうなだれている私には目もくれず、潤君は早々と自分の勉強にとりかかる。
勉強は大嫌いだがそれ以上に赤点だけは免れたかった私は、言われるまま渋々と机の上に勉強道具を広げたのだった。