アキと私〜茜色の約束〜
「ははは…ダセェだろ?」と嘲笑するように笑う秋人の声は、若干涙を含んでるように聞こえる。
心臓がドクンドクンと、重苦しく音を鳴らす。
秋人が前半、全然走らないのはこういうことだったんだ。
あの事故で秋人が怪我をしていたなんて全く知らなかった。
今思うと、あんなに大きな事故。
秋人が怪我をしていてもおかしくない。
「でも、このインターハイだけは…例えこの先足が使い物にならなくなったとしても、最後まで走り続けてみせる」
トントン、と微かだけど何かを叩く音が聞こえる。
カーテンに映るシルエットからして、秋人が椅子に座って自分の腿を叩いているんだと思う。
その行動から、秋人の苦しくて悔しい気持ちが伝わってくる。
「約束、だもんな?茜に二人で金メダルを掛けてやろうって」
約束?
何…それ…
そんなの私、知らないよ…