アキと私〜茜色の約束〜
秋人は中学の時、ぐれて練習を無断で休み続けて散々迷惑掛けた挙げ句、退部するような最低な人間だよ?
今だって、どうせ不真面目にやってるんでしょ?
なのに、なんで秋人なのよ。
本来、あの場所は…
秋人がいるあの立ち位置は、アキの居場所だったハズなのに…
「本当に凄いなぁ。あとはアキ君がいればインターハイ優勝も夢じゃないーー」
「っっ」
弥生の口から出たアキの名前に、またしても体がピクッと反応した。
そんな私に気付き、弥生は話すのを止めて、気まずそうに「…ごめん」と謝る。
弥生は悪くない。
アキを知ってる人間なら、誰もが弥生と同じことを思うだろう。
“アキがいれば”
でもその言葉は、私にとって一番辛く悲しい言葉だ。
「茜」
弥生と私の間に流れる重い空気をばっさりと切るように、この世で一番嫌いで聞きたくもない声が私の名前を呼んだ。