アキと私〜茜色の約束〜
振り返らなくてもわかる。
私を辛そうな瞳で見る、秋人の姿が。
何度も視線を感じたことはあるけれど、こうやって話し掛けられたのはあの日以来かもしれない。
ずっと避け続けて来たのに、今更隣りの席になってしまうなんて。
私は一度も秋人を見ず、机の脇に鞄を掛けると、教室を出た。
「ちょっと待ってよ!茜」
追ってきた弥生に腕を掴まれて足を止める。
「さっきの、茜らしくないよ。どうしたの?二人に何かあった?この前も言ったけど、昔はあんな仲良かったじゃない」
「もう過去のことだよ」
「アキ君のことが原因?」
いくら弥生でも、言いたくない。
口にするにはあまりにも辛すぎる。
「ねぇ、茜。私にも言えないことなの?」
「ごめん、1人にして」
今は1人になりたい。
この胸の中に渦巻く、言葉に出来ないような黒い感情を、弥生にぶつけてしまう前に。