アキと私〜茜色の約束〜

「わかった」

「よし。三本勝負、先攻は茜な」

「うん」


こんな時でさえも勇気が出ない私。

“勝負なんてしなくても、私は秋人が好き”

そうやって、今すぐ言えればいいのに。
言えない小心者の私は、少し時間が必要なの。


秋人が引いた線に立ち、数回ボールを地面について構える。


あ…なんかこの感じ、久しぶり。
中学三年間、一応女子バスケ部だった私。
可もなく不可もなくの実力だったうちのバスケ部は、それなりに楽しかった。

私はアキのスリーポイントシュートのフォームをよく真似して練習していたっけ。


ふぅ、っと息を吐いて気持ちを落ち着けると、アキのシュートフォームを頭に思い浮かべて、ボールを放った。

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